保釈と再逮捕

>https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190404-00009464-bengocom-soci
>ゴーン被告人は昨年11月、会社法違反や金融商品取引法違反などの疑いで逮捕されて、その後起訴された。
>約3カ月の勾留後に保釈されたが、4月4日朝に会社法違反(特別背任)の疑いで東京地検特捜部に再逮捕された。
>4月11日に同じ外国特派員協会で記者会見を開こうとした矢先だった。

弁護人は強く反発している。
保釈で罪証隠滅も逃亡のおそれもないと判断されたのを
実質的に覆すものだという批判もある。

ここでの問題は少々複雑だと思われる。
切り口の一つに、「事件単位」「人単位」
あるいは、「時間経過」「物的証拠の収集」がある。

保釈の際には、保釈の対象となる勾留事件が
罪証隠滅や逃亡のおそれを判断する場合の対象となるのは当然だが
その周囲にある事情をどこまで考慮に入れられるかが問題となる。
罪証隠滅に関しては、勾留事件のそのものや事件に関わる重大な情状事実に限定されることになる。
この点は大方一致する話だろう。
逃亡に関しては、より難しい。裁判から逃げる理由は必ずしも勾留事件によらないことがある。
経済的に困窮しており借金取りから逃げたい様子であるなどして住居が安定しないなどが例えばである。
また、万引き犯人が別の重大犯罪(強盗殺人)を抱えていた場合、逃亡するおそれは極めて高度だろうが、
本来逮捕・勾留されるべき強盗殺人での拘束をしていないのに、別の軽い犯罪で別事件の存在を理由に
逃亡のおそれを判断することになると、あらゆる事件で身柄拘束を続けることができ、
実質的に重大事件に関する身柄拘束期間の潜脱につながってしまう。
身柄拘束に至らない非行は考慮できるという考えもあるだろうが、その枠(境界)は不明瞭である。
したがって、逃亡のおそれについても昨今は勾留事件の軽重と純粋な身上以外には考慮しない考えも
それなりに説得力があるように思われる。

以上みてきたところによると、保釈の判断が出たとしても、その後の別の捜査で逮捕・勾留がどうなるかは
別問題であると考えるのが自然である。

もっとも、後行の事件については、既に時間が経過しており捜査を進める余地があったこと、
被疑者の態度等が明らかになり、認めている・黙秘しているなどの場合には被疑者取調べの必要性は減退すること、
前件で物的な証拠収集も進められ、後行事件で必要な物的証拠と重なるものも多く、
身柄拘束をしていないと隠滅されるというおそれもなくなっていることなどの事情があることから
罪証隠滅のおそれがないと判断する余地もあるだろう。
逃亡のおそれは、前件の事件が重大で、後行の事件が軽微であれば後行の事件が加わっても逃亡の可能性が上がらない
という判断もありうるだろう。