冤罪DVについて(保護命令制度と関連して)その1

>「冤罪DV」の加害者にされ、子どもと引き離される夫たち…その実態と課題
>2016/8/9(火)9:47 弁護士ドットコム

1 保護命令の問題について取り上げた記事である。
  前に自分のブログで保護命令制度の問題点を取り上げた記事を書いたかと思ったが
  見つからないので、この記事を読んで改めて簡単に書いておきたい。

2 まず保護命令制度のイメージだが
  この制度は「典型的なDV被害者」を迅速・十二分に保護するためのものであるように思われる。
(1)これは例えば、初回の退去命令では退去を命じられる相手方の事情を斟酌することが許されず
  かつその法定期間も、「2か月」と非常に長期に及んでいることにも表れている。
  (法律制定当初は「2週間」であったものが改正により変更されたものである)
  (取消し制度もあるが、これには申立人に異議がないことが必要である。法17条1項)

  そして退去命令の意義を、
  申立人が当該住居からの引っ越しを済ませるのに必要な限度の期間を確保するためのものと
  解する立場にたつと、
  上記退去命令の効果は、深刻なDV被害に遭って精神的な回復と新たな生活を始めるのに時間がかかる
  まさに深刻な「DV被害者」にとっては、それほどの期間も必要になるかもしれないが
  ほとんどすべての相手方にとっては非常に重い負担であり(深刻なDV加害者には自業自得としても)、
  また、それなりに準備をした上で申し立てた申立人にとっても必要以上の余分な利益でしかない。
  そのため、実務では、申立人において早期に引っ越しの手続をすることや引っ越しが済んで
  退去命令の必要がなくなったら速やかに取り消しを申し出るよう促しているやに聞く。

(2)また、法13条は「(迅速な裁判)十三条  裁判所は、保護命令の申立てに係る事件については、
 速やかに裁判をするものとする。」と規定し、裁判所に対し、迅速な裁判を要求している。
  このため、どうも実務でも、相手方の言い分を聞く時期を申立てから間もなくのところに設定し、
 そのため相手方の準備時間も短く、弁明の時間も上記記事によれば20分程度と短いもので
 判断を行うのが通常のようである。
  むろん、DV事実の存否に疑いがあれば、審理を継続すべきであるのだが、一定の証拠が
 申立人から出されている場合には、法13条のもとでは、それなりの決断を要することになると思われる。
 (なお、記事のような、「冤罪」はあるかもしれない〔というか誤判のない裁判制度というのは
 本質的にありえない。〕。とはいえ、上記記事は相手方となった男性側の言い分に沿ったものなので、
 当該事件に関する真実性を担保するものはないのであって第三者による検証は難しい。)

※ここでの実務というのはある程度前に聞いたことであり
 現在の実務運用と異なる可能性があるので、ご了承願いたい。