『法医学入門』八十島信之助(中公新書)1966

153頁「腐臭は腐敗現象が進むにつれて生じてくるのだから、死後一昼夜以内ぐらいでは、とくに腐敗しやすいような環境におかれたのでなければ、それほどひどい臭にはならないのがふつうである。われわれが解剖するのを見学するひとびとがある。その中でも医学生や、職務として立ち会われる警察官や検察官などは、ある程度の臭は覚悟しているのだろう。しかし司法修習生などの団体が解剖室に入ってくると、そのなかにはかならずハンカチで鼻をおさえているひとがある。われわれの感覚では、まだ新鮮で腐臭などというほどの臭がまったく感じられないばあいでもそうである。」