各種契約に与える影響、破産管財人の権限、債権調査手続など

 破産管財人の権限、破産手続開始の決定が各種契約に与える影響、財団債権・破産債権、
破産債権の調査・確定手続などについては、破産者側にとって大事そうなものについて多少見た上で、
全体はおまけ的に後で扱うことにしたいと思います。

1 賃貸借契約
 賃借人が破産した場合には、既に賃料を支払い利用した分はさておき、将来部分は双方未履行の双務契約ですので、破産管財人は契約を解除するか破産者の債務を履行し相手方の債務の履行を請求するか選択できます。
 旧法にあった賃貸人からの解約申入権は削除されました(旧民法621条)。
 したがって、居所である賃貸住宅の(賃貸借契約上の地位及び)敷金につき自由財産拡張ないし放棄がなされれば、以後、破産者が新得財産から賃料を支払うことで、引き続き居住できることになります。

2 別除権
 別除権とは、破産財団に属する財産について、担保権等(抵当権、特別の先取特権、質権、商法・会社法上の留置権、仮登記担保権、譲渡担保権等)を有する場合には、破産手続によらずにこれを行使することができるようになっています。

 例えば破産手続を経て債務が免責されても、自分が所有する土地・建物に設定されていた住宅ローンの抵当権は消滅しません。
 したがって、ローンの回収のために抵当権が実行されるのは破産しても避けられず、実行されれば住居から追い出されることになります。
 もっとも抵当権者が抵当権を実行しない場合、住宅の所有権は維持され、そこに居住し続けることもできます。
これは破産債権者から見ると破産者が何やら上手にやっているようで腹が立つことかもしれません。
 ただ、それはあくまでも別除権者の対応の反射的な利益にすぎません。

3 否認権
 破産手続開始前に、破産者に属する財産を減少させて破産債権者を害し、又は破産債権者間に不平等をもたらす行為があった場合、破産財団との関係でその行為の効力を否定することができます。破産管財人が行使すべきこの権利を否認権といいます。

 例えば、破産者が、当座の資金繰りのために財産を不当な安値で処分したり、強硬な一部の債権者や自己に緊密な一部の債権者だけに弁済や担保の提供をする場合もあります。
 また、自分が借金の返済に困っているにもかかわらず、知人等への何らかの援助を続けている人もいます。
 破産者のこれらの行為は、破産債権者にとっては自己の利益を害されるものですから、行為の性質内容等を勘案して定められている要件(破産者・相手方等に関する)に該当する場合、行為の効力が否定されて、破産管財人が行為の相手方(あるいは転得者)から利益の返還を受けることになります。