朝日新聞連載小説

 13歳と14歳の少年の取り扱いの違いについて説明をいれていたりして正確な知識で書こうとしていた
と思いますが、先日ぱっと見でミスがありました。
 警察側の心理描写としてこんな傷害では検察は100%不起訴処分だ、というものがありましたが
少年事件は全件送致主義が採用されているので嫌疑があれば検察が止めることはできません。

<少年事件の送致について若干の補足>
 ・非行当初に、被害者が被害届を渋ったとか、諸般の事情を踏まえて署限りの扱いとされることもある
  と思いますが、これは事件として扱われていないので全件送致の話にのってきません。
 ・簡易送致(初犯の軽微な万引き、自転車の占有離脱物横領などが対象)という分類というか扱いがあり、
  全般に簡略な取り扱いとなりますが、それでも家裁に事件が送られることになっています。
 ・また、法定刑がかなり軽い(罰金以下)の類型の事件は直送事件と呼ばれ、検察を通す事無く
  警察から家裁に直接に事件が送致されますが、これも家裁に送致されることに変わりありません。

 それと、ある少年の家族(少年の祖父?が県議)から依頼された弁護士らがその少年の弁護人になった上、
別の少年(母子家庭で経済状況は宜しくない)の弁護人にもなるらしいみたいな描写が小説中にありました。
 これ自体は必ずしもおかしい話ではないのです(自白事件の成人共犯に同じ弁護士がつくことはあるし、
被疑者には弁護人を自由に選任できる権利がある)が、
 ・事件当初であり共犯者の利害対立がないとは見がたいこと、
 ・少年事件では、事件その他の立場、役割、学校生活、あるいはさまざまな個別的事情が
 処遇上重要であり、成人事件よりも利害が対立する所が多い・大きいこと
 ・家裁送致されれば本来開示されない個々の家庭のプライバシー等を複数同時に見てしまい、
 秘匿情報の流出・混在につながりかねないこと、
 ・昔と違い弁護士増員で少年事件に携わる弁護士も増えていること、
 ・被疑者国選制度により傷害事件で勾留されれば国選弁護人を付けることができ、
 少年事件では、通常、少年本人がその費用を事後負担することにはならないこと
などの事情に照らせば、利益相反の危険性が高いが、その弁護士が共犯少年の弁護人になる
必要性が高度ともいいがたい状況にあると思われますので、
後で懲戒請求がされた場合に、現実にその弁護士が県議の孫に肩入れして便宜を図ったと証明できなくても、
外形的にみて品位を害するなどと言われたらどうなのだろうと、ふと気になりました。