おまけ1・破産管財人の権限と義務

破産管財人の職務とその内容
□ 破産財団の占有、管理(79条)
 印鑑、通帳、有価証券類、手持ち現金その他の高価品、不動産の鍵、契約書帳簿類などの引き渡しと保管。
□ 破産原因と破産財団の調査(153条以下)
 財産状況報告書(破産に至った事情、破産者や破産財団の経過・現状、役員責任査定、その他必要事項を記載した)の作成・提出義務(157条1項)、財産状況報告集会におけるその要旨の報告義務(158条)、債権者集会の決議の定めによる報告義務(159条)
 破産財団に属する財産の評定、財産目録・貸借対照表の作成(財産が1000万円に満たない場合、裁判所の許可を受けて貸借対照表の作成不要、153条3項)
 財産評定の目的は、破産財団の規模・予想配当率についての資料を得ることです。
 説明要求権(40条)、帳簿・書類等の物件検査権(83条1項)などの直接的な権限や、任意の事情聴取、裁判所への調査嘱託申し入れなどにより必要な事情を明らかにします。
 また、破産管財人へ転送された郵送物に破産財団に属する財産の手掛かりが見つかったりもします。
 役員の責任追及として、責任査定請求、査定決定に対する異議の訴え、別途の訴えといった方法があります。財産保全のために、保全処分(仮差押)をすることも考えられます(177条)。
 
□ 破産債権の調査(115条以下)、財団債権への対応
 財団債権、破産債権については、別途触れます。

□ 破産財団の換価、配当(184条以下)
 一定の換価行為は、裁判所の許可を得る必要があります。
 例えば不動産の物権等の任意売却、高価な動産の任意売却などがあります(76条2項、3項、規則25条)
 破産管財人は要許可行為をなすに際して遅延のおそれがある場合を除き、破産者の意見を聴くことになっています(78条6項)

□ 別除権、取戻権への対応
 権利者は破産手続外で行使できますが、抵当権付き不動産では競売ではなく破産管財人が任意売却して一部を財団に組み入れてもらうこともあります。なお、担保権消滅請求制度(186条以下)とか、商事留置権の消滅請求(192条)というものもあります。
 取戻権では、破産管財人がその物件の占有を有しており、権利の存否確認や返却事務などがあります。

□ 契約関係の処理(53条以下)
 一部言及済み。

□ 訴訟関係の処理
 全訴訟に関与するわけではありません。

□ 否認権の行使(160条以下)
 一部言及済み、改めて触れる予定です。

□ 経理関係の処理と税金の申告
 還付あり、追徴ありといった場合もあります。
 破産管財人の報酬その他で源泉徴収する必要のあるものもあります。

□ 営業の継続(36条)
 営業しないのが原則ですが、裁判所の許可を受けて継続できます。
□ 債権者集会への報告(158条等)
 債権者集会は破産債権者に対する数少ない情報提供の場ですので、適切な情報の提供を行うのが望ましいと考えられます。もっとも、集会の主宰は裁判所が行うものですので、難しい案件では破産管財人は裁判所との事前の打ち合わせ等に時間をとる必要もあるかもしれません。
 
□ 注意義務
 善良な管理者としての義務(85条)
 なお、裁判所には一般的な監督権(75条)、許可権限(78条2項)などがあり、また債権者委員会などの制度によって破産管財人に対する監督を行えるようにされています。
 
□ 報酬の受領権
 破産管財人には報酬を受け取る権利があります。