(従前)任意(処分と考えられていた)捜査に対するマスメディアの攻勢

検察庁の捜査関係事項照会リスト

・Tカード情報令状なく捜査に提供 規約明記せず、当局は保秘

・ゲーム会社に対する位置情報捜査

 捜査機関が、民間企業に対する個人情報に関する捜査照会が、
令状なしに行われていることについて
立て続けにやり玉に挙がっている。

 その裏面の事情に何かがあるのかないのかはさておいて、この問題を少々考えてみたい。

 まず根拠条文は次のとおりである。
刑訴法第197条
1項 捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。
   但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。
2項 捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。
5項 第二項又は第三項の規定による求めを行う場合において、必要があるときは、
   みだりにこれらに関する事項を漏らさないよう求めることができる。

 捜査関係事項照会の利害得喪を考える。
(メリット)科学的な捜査により、事案の真相解明や犯人(集団)の謙虚に資するといえる。
(デメリット)本来知られたくはないプライバシーが捜査機関に入手されてしまう。

 法律の理屈からすると、
「公私の団体」への照会は「できる」となっている以上、
その権利の制限が、いわゆる任意捜査に当たろうが、強制捜査に当たろうが、刑訴法の特別な定めがあるので可能である。
マスメディアは、ここのところで、令状なしにできることを問題にしているが、法文に反しており、
それは、おそらくは意図的に伏せて報道しているからであろうと思える。


ともかく、強制処分法定主義の問題はなく、むしろ主たる問題は、
行政活動全般を規律する原則である「比例原則」であろう。
任意にできることでも、必要性・相当性・緊急性の見地から、適切な範囲にとどめないといけないという話だ。
その吟味ができるかが問題になると思われるが、
実のところ、照会は相手方に照会の事実が残る、何を回答したかが残る、という大きなポイントがあり、
また、現行の刑訴法は、整理手続きを行えば、検察官手持ち証拠が開示される構造にもなっている。

そういった点からすると、捜査に必要のない照会は論外だが、捜査に関係のある照会であって
相手方が応じてくれるのであれば、基本的にそれが比例原則に違反するということはないように思われる。