勾引(刑訴法関係条文)

第五十八条  裁判所は、次の場合には、被告人を勾引することができる。
一  被告人が定まつた住居を有しないとき。
二  被告人が、正当な理由がなく、召喚に応じないとき、又は応じないおそれがあるとき。
第五十九条  勾引した被告人は、裁判所に引致した時から二十四時間以内にこれを釈放しなければならない。但し、その時間内に勾留状が発せられたときは、この限りでない。
第六十二条  被告人の召喚、勾引又は勾留は、召喚状、勾引状又は勾留状を発してこれをしなければならない。
第六十四条  勾引状又は勾留状には、被告人の氏名及び住居、罪名、公訴事実の要旨、引致すべき場所又は勾留すべき刑事施設、有効期間及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長又は受命裁判官が、これに記名押印しなければならない。
○2  被告人の氏名が明らかでないときは、人相、体格その他被告人を特定するに足りる事項で被告人を指示することができる。
○3  被告人の住居が明らかでないときは、これを記載することを要しない。
第六十六条  裁判所は、被告人の現在地の地方裁判所家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に被告人の勾引を嘱託することができる。
○2  受託裁判官は、受託の権限を有する他の地方裁判所家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に転嘱することができる。
○3  受託裁判官は、受託事項について権限を有しないときは、受託の権限を有する他の地方裁判所家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に嘱託を移送することができる。
○4  嘱託又は移送を受けた裁判官は、勾引状を発しなければならない。
○5  第六十四条の規定は、前項の勾引状についてこれを準用する。この場合においては、勾引状に嘱託によつてこれを発する旨を記載しなければならない。
第六十七条  前条の場合には、嘱託によつて勾引状を発した裁判官は、被告人を引致した時から二十四時間以内にその人違でないかどうかを取り調べなければならない。
○2  被告人が人違でないときは、速やかに且つ直接これを指定された裁判所に送致しなければならない。この場合には、嘱託によつて勾引状を発した裁判官は、被告人が指定された裁判所に到着すべき期間を定めなければならない。
○3  前項の場合には、第五十九条の期間は、被告人が指定された裁判所に到着した時からこれを起算する。
第六十八条  裁判所は、必要があるときは、指定の場所に被告人の出頭又は同行を命ずることができる。被告人が正当な理由がなくこれに応じないときは、その場所に勾引することができる。この場合には、第五十九条の期間は、被告人をその場所に引致した時からこれを起算する。
第六十九条  裁判長は、急速を要する場合には、第五十七条乃至第六十二条、第六十五条、第六十六条及び前条に規定する処分をし、又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
第七十条  勾引状又は勾留状は、検察官の指揮によつて、検察事務官又は司法警察職員がこれを執行する。但し、急速を要する場合には、裁判長、受命裁判官又は地方裁判所家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官は、その執行を指揮することができる。
○2  刑事施設にいる被告人に対して発せられた勾留状は、検察官の指揮によつて、刑事施設職員がこれを執行する。
第七十一条  検察事務官又は司法警察職員は、必要があるときは、管轄区域外で、勾引状若しくは勾留状を執行し、又はその地の検察事務官若しくは司法警察職員にその執行を求めることができる。
第七十二条  被告人の現在地が判らないときは、裁判長は、検事長にその捜査及び勾引状又は勾留状の執行を嘱託することができる。
○2  嘱託を受けた検事長は、その管内の検察官に捜査及び勾引状又は勾留状の執行の手続をさせなければならない。
第七十三条  勾引状を執行するには、これを被告人に示した上、できる限り速やかに且つ直接、指定された裁判所その他の場所に引致しなければならない。第六十六条第四項の勾引状については、これを発した裁判官に引致しなければならない。
○2  勾留状を執行するには、これを被告人に示した上、できる限り速やかに、かつ、直接、指定された刑事施設に引致しなければならない。
○3  勾引状又は勾留状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、前二項の規定にかかわらず、被告人に対し公訴事実の要旨及び令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができる。但し、令状は、できる限り速やかにこれを示さなければならない。
第七十四条  勾引状又は勾留状の執行を受けた被告人を護送する場合において必要があるときは、仮に最寄りの刑事施設にこれを留置することができる。
第七十五条  勾引状の執行を受けた被告人を引致した場合において必要があるときは、これを刑事施設に留置することができる。
第七十六条  被告人を勾引したときは、直ちに被告人に対し、公訴事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨並びに貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。但し、被告人に弁護人があるときは、公訴事実の要旨を告げれば足りる。
○2  前項の告知は、合議体の構成員又は裁判所書記にこれをさせることができる。
○3  第六十六条第四項の規定により勾引状を発した場合には、第一項の告知は、その勾引状を発した裁判官がこれをしなければならない。但し、裁判所書記にその告知をさせることができる。
第七十七条  逮捕又は勾引に引き続き勾留する場合を除いて被告人を勾留するには、被告人に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。但し、被告人に弁護人があるときは、この限りでない。
○2  第六十一条但書の場合には、被告人を勾留した後直ちに、前項に規定する事項の外、公訴事実の要旨を告げなければならない。但し、被告人に弁護人があるときは、公訴事実の要旨を告げれば足りる。
○3  前条第二項の規定は、前二項の告知についてこれを準用する。
第七十八条  勾引又は勾留された被告人は、裁判所又は刑事施設の長若しくはその代理者に弁護士、弁護士法人又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる。ただし、被告人に弁護人があるときは、この限りでない。
○2  前項の申出を受けた裁判所又は刑事施設の長若しくはその代理者は、直ちに被告人の指定した弁護士、弁護士法人又は弁護士会にその旨を通知しなければならない。被告人が二人以上の弁護士又は二以上の弁護士法人若しくは弁護士会を指定して前項の申出をしたときは、そのうちの一人の弁護士又は一の弁護士法人若しくは弁護士会にこれを通知すれば足りる。