強制処分と任意処分の区別、違法収集証拠排除

判例上はS51で「意思の制圧」と「重要な権利利益の制約」の2要件であると理解されるが、その中身が難しい。そもそも強制処分性を認めた判例をいくつか見ると、意思の制圧と権利制約の点は一文でまとめて書いてある感じで、卒然と2要件となっていないと思う。

そのために、どの要素が意思の制圧に関わる部分なのかどの要素は重要な権利利益の制約にかかわる部分なのか分からないものもある。

 

そして、意思制圧というものも重要な権利利益の制約というのもよく分からない。まず、前者の意思制圧だけど、これを不用意に「意思」と「制圧」に分けるのはまずいと思う。分けると、意思とは何か制圧とは何かという議論が拡散しかねないと思う。

欺罔された意思はここにいう「意思」に当たるのかと議論するのよりも、あくまでも、ある捜査機関の行動が「意思の制圧」といえるか、という観点があって、その中で、何がどの程度抑制されたら「意思制圧」と呼ぶのかを考えないといけないと思う。

で、何を抑制するのかがまたよく分からない。人によって考えが違っているのかもしれない。人の明示又は黙示の意思に反することと解釈するのが有力で、判例もそれに乗っているという解説なんかもある。その亜流だけど根本的に判例のとらえ方が違う、人が認識しない捜査について、いちいち黙示の意思を考えないで、重要な権利利益の制約の一本で考える見解もある。他方で、語感に即して、他の選択肢がないような状況に追い込まれたこと(自由意思が奪われた)、とか、捜査協力しない意思を奪う、と考えるのもないわけではなさそう。並べていくといろいろと出そう。

 

次に重要な権利利益の制約も分からない。重要な権利利益と重要じゃない権利利益って何?一般的な重要な権利利益でいいのか、捜査との関係で特別に保護が必要とされる権利という観点が必要ではないか、という議論もありそう。王は人の家に入れない、どんなにぼろい家であっても、ってのは、確かイギリスの古い法理にあると思う。そういう特別な何かを特に抽出する必要があるのかもしれない。情報の価値が飛躍的に増大している中で、情報の価値=重要性の程度、としてしまうと、証拠価値のある物はすべて強制処分によらなければならなくなるが不合理。

 

それはさておき、違法収集証拠排除の場面では、違法の重大性と排除相当性のいずれもが要件と理解されているけど、捜査機関の事後的な手続違反とか偽証ねつ造なんかを強く非難するような、本来的には違法捜査時点での問題ではない部分に焦点を当てている事例も多い。そして、2要件として違法の重大性を説明するために、事後の偽証が当時の違法捜査の意図を推認させると認定しているが、いささか規範的な事実認定のように思える。そうすると、違法の重大性と排除相当性は(2つの)要素として総合考慮にした方が、穏当な論理展開ができるんじゃないかと思ったりしなくもない。(もちろん、違法性があること、排除にふさわしくないものではないことは前提として、排除に行きつくための超過要素部分を総合考慮しちゃうって話だが)

 

とりあえず短文を取り留めもなく書いたのでどこかできちんと整理したい。