【メモ】最高裁・道路交通法違反3(平成18年~平成21年)

道路交通法違反被告事件
 平成21年7月14日  最高裁判所第三小法廷  判決
□判示事項  1 法定刑超過による非常上告
      2 観念的競合の適用条文について補足意見が付された事例
□【略式命令の法定刑超過】
 危険防止措置義務違反と報告義務違反とが観念的競合
 (※罰金10万円以下のところ合算した15万円以下と誤って、科刑したっぽい事案)

道路交通法違反被告事件
 平成21年3月16日  最高裁判所第二小法廷  判決
□判示事項  昭和40年法律第96号附則2条1項等により運転できる普通自動車が制限された運転免許を
      受けている者が上記制限外の普通自動車を運転した行為は平成16年法律第90号により
      道路交通法91条違反となったのにこれを看過してなされた略式命令に対する非常上告
□【法令の改廃に伴う反則行為化】
 被告人は,公安委員会の行う審査に合格するまでの間は,運転できる普通自動車
 自動三輪車及び軽自動車(360cc以下)に限るとする普通免許を有していた者であるところ,
 上記以外の普通自動車を運転する行為については,平成16年法律第90号による道路交通法の改正により,
 平成19年6月2日をもって,これを無免許運転とみなす旨規定していた昭和40年法律第96号
 附則2条4項が削られ,無免許運転ではなく,反則行為である道路交通法91条の免許条件違反とされる
 に至った。したがって,被告人に対しては,同法130条により,同法127条の通告をし,
 同法128条の納付期間が経過した後でなければ公訴を提起することができない。

道路交通法違反,業務上過失致死,業務上過失傷害被告事件
 平成20年6月9日  最高裁判所第一小法廷  判決
□判示事項  反則金納付を看過してされた判決に対する非常上告
□【反則金納付看過による公訴提起】
 上記第1の行為(※過積載)は,道路交通法125条1項の反則行為に該当し,
 被告人が当該反則行為をしたことによって上記第2の交通事故(※車間距離不十分の追突事故)を起こした
 とは認められないから,被告人は同条2項の反則者に該当するところ,被告人は,
 当該反則行為の告知及び反則金納付の通告を受け,
 平成18年10月13日,同法128条1項に従って反則金を納付していたが,
 検察官がこれを看過して本件公訴を提起したことが認められる。

道路交通法違反,業務上過失傷害被告事件に係る略式命令に対する非常上告事件
 平成20年4月15日  最高裁判所第三小法廷  判決
□判示事項  宣告内容と調書判決の記載が異なる判決に対する非常上告
□【宣告と調書判決の主文に齟齬がある場合】
 主文 本件につき作成された調書判決のうち被告人を懲役1年6月に処すると記載した部分を破棄する。
 理由の抜粋 判決は,宣告により,宣告された内容どおりのものとして効力を生じ,宣告された内容が
  判決書の内容と異なるときは,判決書の内容及び宣告された内容の双方を含む意味での判決の全体が
  訴訟手続の法令違反となり,その判決が確定したときは,宣告された内容どおりのものが有効に確定し,
  法令違反は,宣告された内容と異なる判決書の記載部分のみにあると解される(最高裁昭和50年
  (あ)第2427号同51年11月4日第一小法廷判決・刑集30巻10号1887号,
  最高裁平成17年(さ)第1号同年11月1日第三小法廷判決・裁判集刑事288号283頁参照)。

道路交通法違反被告事件
 平成19年12月13日  最高裁判所第一小法廷  判決
□判示事項  家庭裁判所から検察官への送致決定を経ることなくされた起訴に基づき発付された
      略式命令に対する非常上告
□【訴訟条件(少年事件の家裁全件送致看過)】
 被告人は昭和63年8月21日生まれの少年であって,公訴を提起するためには,
 少年法20条1項による家庭裁判所から検察官への送致決定を経る必要がある。
 しかるに,上記(2)の事実(※40km毎時の速度超過)については送致決定がされているが,
 同(1)の事実(※無免許運転)については送致決定がされたことは認められない。
 したがって,略式命令の請求を受けた明石簡易裁判所は,刑訴法463条1項により通常の規定に従って
 審理した上,上記(1)の事実については同法338条4号により判決をもって公訴を棄却し,
 その余の上記(2)の事実についてのみ有罪の言渡しをすべきであった。

道路交通法違反被告事件
 平成19年7月5日  最高裁判所第一小法廷  判決
□判示事項  起訴状に検察官の署名(記名)押印が欠けていることを看過して発せられた略式命令に対する
      非常上告
□【起訴状の形式不備】
 原略式命令は,同月16日付け起訴状による略式命令の請求に対して発付されたものであるが,
 上記被告事件に係る起訴状には,本来起訴検察官を表示すべき部分に,
 「区検察庁 検察官事務取扱検察事務官」と記載されているだけであり,起訴検察官の所属庁の記載
 並びに検察官の署名(記名)及び押印をいずれも欠いていることが認められる。
 したがって,本件略式命令の請求は,公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であり,

道路交通法違反,業務上過失傷害被告事件
 平成18年2月27日  最高裁判所第三小法廷  決定
□判示事項  1 座席の一部が取り外されて現実に存する席が10人分以下となったが乗車定員の変更
        につき自動車検査証の記入を受けていない自動車と道路交通法上の大型自動車
      2 座席の一部が取り外されて現実に存する席が10人分以下となった大型自動車
        普通自動車免許で運転することが許されると思い込んで運転した者に無免許運転の故意が
        認められた事例
□裁判要旨  1 乗車定員が11人以上である大型自動車の座席の一部が取り外されて現実に存する席が
        10人分以下となった場合においても,乗車定員の変更につき国土交通大臣が行う
        自動車検査証の記入を受けていないときは,当該自動車はなお道路交通法上の大型自動車
        当たる。
      2 座席の一部が取り外されて現実に存する席が10人分以下となった大型自動車
        普通自動車免許で運転することが許されると思い込んで運転した者が,
        そのような席の状況を認識していたなど判示の事実関係の下においては,
        運転者に無免許運転の故意が認められる。
□【普通免許で運転できるとの思い込みは故意を否定しない】
 (被告人は、・・・)こと等から,本件車両を普通自動車免許で運転することが許されると思い込み,
 本件運転に及んだものであった。
 本件車両の席の状況を認識しながらこれを普通自動車免許で運転した被告人には,
 無免許運転の故意を認めることができるというべきである。