責任能力の判断にあたり、いわゆる7つの着眼点というものが指摘されている。
これは要件というわけではなく、単純に足したり引いたりするものではないが
そのように誤解されていることもあるそうだ。
要件的な捉え方の誤りについては簡単に説明できる。
7つの着眼点の1つには「計画性の存否」がある。
ここで、責任能力が問題となり得る精神障害2つで考えてみたい。
まず「妄想型統合失調症」で考えてみる。
「被告人は、時間をかけて入念な計画を立てており、確実に成功するように犯行に及んでいる。
これはすなわち、従前から強固な、規範意識を上回る妄想に人格が支配されており、
これに抗して犯罪を行うのを止めるのはまず不可能であった。
・・・被告人は、本件犯行当時、心神喪失の状態にあった。」
次に「重度の精神発達遅滞」で考えてみる。
「被告人は、電車内で、たまたま彼好みの若く美しい女性を見つけるや
他に乗客が居て、乗降もしているにもかかわらず、一目散に客をかき分けて
そのまま女性に飛びついている。
被告人には物事の是非善悪を判断する能力も低いし
善悪の判断ができたとしても、自分の感情をコントロールして行動を制御することは
ほとんど不可能に近いものがある。
・・・被告人は、本件犯行当時、心神耗弱の状態にあった。」
以上のとおり、
前者では計画性があることはむしろ症状の重さ、病気の人格支配の程度の強さを示す材料となり
後者では計画性のなさが処罰すべき犯罪者という以上に憐れむべき対象であることを示す材料となる。
7つの着眼点については、具体的な精神障害との関係性で
それぞれを整理してまとめてやることで、より説得力ある主張を展開する助けになるのではないか
と思う次第である。どこかにそんな文献はあるかな。