金塊密輸事件で没収

利益を得るために金塊を密輸する(どうして儲かるのかは省略)事件がしばしばニュースになっているが、
>https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171213-00010011-nishinpc-soci
>金塊密輸、韓国人4被告に有罪判決 7億円超の没収認める 福岡地裁
>12/13(水) 14:22配信

> 現金と金塊の没収に関し、弁護側は、所有者である首謀者を特定できていない上、
>関税法違反罪の罰金の上限額(500万円)を大きく上回るため「違法だ」と主張していたが、
>森裁判長は、被告らは不当に利益を得るため事件の首謀者と意思疎通を図っていたことなどから、
>金塊と現金は被告の所有だと判断。金塊の密輸入が増加していることなどを踏まえ「予防の観点からも没収すべきだ」とした。

先日の事件では、裁判所が犯行に用いられた金塊あるいは金塊を売却して得た現金の没収を認めた。

没収の訴訟的要件は、薬物などの必要的没収は別として

(没収)
第十九条 次に掲げる物は、没収することができる。
一 犯罪行為を組成した物
二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物
三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物
四 前号に掲げる物の対価として得た物
2 没収は、犯人以外の者に属しない物に限り、これをすることができる。ただし、犯人以外の者に属する物であっても、犯罪の後にその者が情を知って取得したものであるときは、これを没収することができる。

通常は刑法によって規律されている。

そして、この没収では「できる」となっているが、犯罪にかかわる物であれば自由に没収できるわけではなく
犯した犯罪と没収による損害との均衡を逸するようなもの、すなわち相当性が必要と考えられているようである。

例えば、無免許運転、もっと極端に言えば速度違反の罰金の場合、自動車は犯行供用物であるが、
おそらくどんな無免許運転や速度違反の事案でも自動車が実際に没収されることにはならないと思われる。

それは、没収の明示的な要件そのものの問題ではなく、先ほどの相当性というやつで
違反自体に対しては法律で処罰することで対処でき、それに対して高価な価値を有する自動車を奪うというのは
重すぎるという発想があるのではないかと思われる。

今回は金塊や現金を没収したが、ここでは所有者という民事的(実体的)要件以外にも
これは罪の重さと会うのか、あるいは、普通の処罰でまかなえないものが
あるのかどうか、という観点が争点になったのだろうと思われる。

個人的には、密輸事件は簡単に摘発できるものではないので、政策的な意味で言えば、
没収のリスクを示すことで犯罪を禁圧するというのは一理あるように思う。
利益を多く得ている可能性もあるところ、その利益の事実上の掃き出しということにもなるので
もしかしたら一回目かもしれなかったが、それでも法適用全体の中では均衡を失していないと
いうことはできないだろうか。