【刑法】強盗罪・事後強盗罪の量刑分布の検討

ふと思い立って強盗罪・事後強盗罪の量刑分布を考えてみようと思う。

1 司法統計(平成26年)から数字を出す。
 第33表:強盗の罪の地裁終局総人員:510件(終局473件・公訴棄却2件・移送等35件・上訴98件)

 「強盗の罪」:(強盗)第二百三十六条、(強盗予備)第二百三十七条、(事後強盗)第二百三十八条、(昏酔強盗)第二百三十九条とその未遂罪となる。

 cf)強盗致傷・致死:333件(※強盗強姦・同致死を含む)

 第34表:473件
  懲役20年以下:  1件
  懲役15年以下:  5件
  懲役10年以下: 28件
  懲役 7年以下: 56件
  懲役 5年以下:155件
  懲役 3年  : 59件・猶予115件
  懲役 2年以上: 33件・猶予 19件
  懲役 1年以上:  1件・猶予  1件
 (猶予のうち、裁量的保護観察47件)

 ※あまり低いのは強盗予備ではないかとも思えるが、具体的な数値には反映しづらいので検討から除外。

2 いろいろな割合を考える。
実刑:執行猶予>
 第34表だと、実刑:猶予=71.5%:28.5%である。
→強盗の罪全体では、だいたい「7:3」で実刑方向となりそう。

***
 なお、第33表で上訴が98件あるが、これは終局判決の分類とは別次元なので
上記の計算に影響を与えないと思われる。
 ちなみに、上訴の理由としては事実誤認か量刑不当だろうと思われるが、
強盗なので否認で執行猶予は少ないだろうし、執行猶予で量刑不当も労力を考えるとほぼなさそう。
となるとほぼ全部実刑とみてよさそうである。
***

実刑:執行猶予への前科の影響>
 それなりの前科がある者は実刑しかないだろうが
 犯罪白書(平成22年版)http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/57/nfm/n_57_2_7_4_1_3.htmlによると
 強盗のうち前科(交通事犯を除く罰金前科以上)者は、363件のうちで
 前科あり166〔45.7%〕(3犯~5犯:48〔13.2%〕、6犯以上:45〔12.4%〕)

 3犯以上となる25.6%に猶予はあり得ないだろう。
 したがって473×0.256=121件は実刑

 その他事案(1,2犯を含む)での実刑・猶予の割合を単純に考えると
 473-121=352(うち、実刑217、猶予135)
 →61.6%:38.4%
 →「3:2」(前科0、1,2犯)

 ※ちなみに実刑になりそうな前科2犯の割合を仮に10%とすると
  473×0.356=168
  473-168=305(うち、実刑170、猶予135)
  →55.8%:44.2%
  →「5:4」(前科0,1犯)

 ※逆に、前科ありを全部実刑だと仮定した場合には
  473×0.543=257(うち、実刑122、猶予135)
 →47.5%:52.5%
 →「1弱:1強」
  前科の中には罰金が含まれること、古い前科もありえることを考えると
  それなりに意味のある自由刑前科を持たない者について
  (つまり強盗という事案の重さによって)直ちに刑務所に行くかどうかは
  半々(か、やや刑務所に行くことが気持ち多い)ということになりそう。

3 実際の量刑を考える際のその他要素
(類型)
 ▲複数犯、類似の強行犯(恐喝)もやってる場合、回数に応じてワンランク以上あがるだろう
 ▲似たような軽微な犯罪(窃盗、住居侵入など)も若干上がるだろう。
 ▽事後強盗はワンランク下がるだろう

(態様)
 ▲脅して縛り上げるなどの反抗抑圧の程度が高ければ、ワンランク上がるだろう。
 ▽暴行と脅迫だと暴行の方が通常で、脅迫は一過性の恐怖だろうからワンランク下がりそうだが
  脅迫の場合だと、刃物などの使用がないと強盗と認められないケースが多い
  (〔事前〕恐喝。〔事後〕窃盗と暴行or傷害)だろうから、危険性を考えるとせいぜい半ランクくらいか。

(結果)
 ・金額が大きいならその程度に応じて、罪も重いだろう。
 ▽強盗未遂は状況によるが半ランクかワンランク下がるだろう。

(前科)
 ▲執行猶予前科はワンランク以上あがるだろう。
 ▲同種罰金は半ランクくらい上がるだろう

(被害弁償)
 ▽経済的被害や精神的苦痛に対する慰謝の措置(=金銭による賠償)がとられればワンランク下がるだろう。

(近接する犯罪での状況〔軽微な強盗致傷あたり〕)
 分かればいいが、よく分からない。

(平成27年11月1日大幅修正)