おまけ2・破産債権等

債権の優先順位
財団債権(この中にも優劣があります)>優先的破産債権(この中での優先順位は民法、商法などの実体法により決まります98条)>一般の破産債権>劣後的破産債権
※財団債権、別除権、取戻権は破産手続外で行使できるものとして一グループですが、財団債権は配当にかかわるものなので、ここではまとめて記載することにしました。
※債権の優先順位と、破産債権の免責・非免責はそのまま一致するわけではありません(それぞれは別個の規律です)

各債権の意味・内容
 
◎財団債権
 財団債権とは「破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権」です(2条7項)。
○一般の財団債権(148条)
 ①破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権。例:開始手続申立て費用
 ②破産財団の管理、換価、配当に関する費用。例:破産管財人の報酬(87条)、郵送費用
 ③破産手続開始前の原因に基づく租税等の請求権(納期限未到来、納期限から1年経過していないもの)
  旧法では期限の制限なく全額財団債権になっていたが、破産手続が事実上税金返済のみで終わり、労働債権への弁済がされないケースも多かったことから、一定の期間を限定することにしたものです。
 ④破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権。例:破産管財人がその職務につき第三者に対して加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
 ⑤事務管理又は不当利得により破産手続き開始後に破産財団に対して生じた請求権
 ⑥委任の終了又は代理権の消滅の後、急迫の事情があるためにした行為によって破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権
  急迫の事情なく、委任の終了を知らないで事務処理をした場合、破産債権となります(民法655条)。
  ただし、破産財団のために事務管理が成立するときは⑤のとおり、財団債権となります。
 ⑦破産管財人が破産法53条1項により債務の履行をする場合において相手方が有する請求権。例:双方未履行の契約で破産管財人が履行を選択した場合
 ⑧破産手続きの開始によって双務契約の申し入れがあった場合において破産手続開始後その契約の終了に至るまでの間に生じた請求権
  賃貸借契約や雇用契約などの継続的契約が破産管財人による解除や解約により終了した場合における破産手続開始後終了までに発生した請求権は、財団債権とされています。
 ⑨債務者の財産に関し権限に基づいてした行為によって生じた請求権
  保全管理人がその権限に基づいてした行為によって生じた請求権など。
 
○特別の財団債権
 ①破産管財人が負担付き遺贈の履行を受けた場合の負担受益者の請求権(148条2項)
  財団債権の範囲は目的物の価額を限度とされています(民法1002条1項が、受遺者が負担する義務は遺贈の目的物の価額を超えない限度としていることから)。
 ②双方未履行の双務契約を解除した場合の相手方の反対給付価格償還請求権(54条2項)
 ③使用人の給料等(149条 開始前3か月間の給料、退職手当のうち退職前3か月間の給料の総額に相当する額)
  労働者保護を図るために格上げされた債権です。範囲外の給料は優先的破産債権となります。
 ④社債管理会社等の費用および報酬(150条)
 ⑤その他の財団債権
  訴訟費用など(44条3項、46条)
 ⑥先行手続の費用
  民事再生手続から破産に移行した場合
 
○財団債権の特徴
 ・随時弁済を受け得る ・債権調査等は不要(規則50条1項に速やかに申し出るべき旨の規定がある)
 (・他の債権同様、強制執行は禁止)
 ・一般の財団債権①②④は他の財団債権に優先する
 (諸手続費用の残額が破産管財人の報酬になるのが通常。それでも余りがあれば税金・労働債権への支払に当てられ、全額弁済できないときは案分弁済を行う。ちなみに、破産管財人の報酬については源泉徴収義務があるというのが判例
 
◎破産債権
 破産債権とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しないものをいいます(2条5項)。
 
○優先的破産債権
 破産財団に属する財産につき一般の先取特権その他一般の優先権がある債権は、他の破産債権に優先します(98条)。雇用関係に基づく従業員の労働債権は、財団債権となるもの(149条)を除きすべて優先的破産債権となります(民法306条2号)。生活困難のおそれがあれば裁判所の許可を得て弁済を受けることができます(101条)。また、租税債権(租税等の請求権)も破産手続開始前の原因に基づき生じた、納期限から1年以上経過したものは優先的破産債権となります。
○劣後的破産債権
 劣後的破産債権は破産手続開始後の原因に基づき生じた租税債権(財団債権となるものを除く)などです(99条)。なお、配当順位を劣後的破産債権に後れると破産者と債権者の間で合意していた債権(約定劣後破産債権)は、最後順位の破産債権となります(99条2項)。
 
○破産債権の特徴
 ・破産手続によらないで権利行使することは禁止
 ・調査手続を経て額が確定されることが必要
 ・破産裁判所に債権届出をすることで破産債権者として取り扱われる(債権届出を含めて債権調査手続を留保している場合、集会への出席権に関しては、破産者の自認なり破産管財人の調査なりを踏まえて裁判所が決めていくことになると思われる)