捜査技法と公判立証

 今日は、証拠に関して、捜査と公判の違いという点を少し整理してみます。
 さて、犯人発見のための捜査手法は様々ですが、それらがみな公判に請求されるのか、というとそうではないでしょう。
 思いつくことを少しあげてみると、
 例えば、警察犬の利用ということでは現在は犯人追跡等は犯人性の認定としてあまり公判に提出されておらず、捜査の手掛かりとして用いられることが多いそうです。他方、犯人と被告人の同一性の判定という臭気選別は、ときどき公判にも証拠として提出されます。
 また、目撃者ではあるけれど、(報復等のおそれから)自分の存在が公になってほしくない人物の場合、令状請求等ではそれを証拠にしても、さらなる証拠が集まった段階で、立証の軸から外してしまい、公判では影も形も出てこないということもあるかもしれません。
 そのほかには、特徴的な手口の犯行が続いている時に(放火、侵入盗など)、近くにいる同じ前科をもっている(特に数を重ねている)者をチェックし、尾行するなどして犯行現場を押さえようとする方法も考えられます。前科による犯人性の立証は、いわゆる悪性格立証として公判では許容されませんが、捜査の手掛かり的な使用はあるかもしれません。
 
 法律を学ぶ場合、刑事訴訟法などで裁判に関する教科書を使うことになるわけですが、そこで問題にされていない実際の「捜査」技法はいろいろ存在しうるところで、それらを知るには、警察官用の本なり実地で経験を積んでいくしかないのかもしれません。
 
 新聞記事に、信州大学(?)法科大学院で、院生が検察官役をして被疑者を取り調べ、捜査を行うという話が載っていたので、ふとそういったことを考えました。何となく、弁護士(弁護人)側の経験・体験が多くなりがちなところですが、こうやって、らりくらりと尋問をかわす被疑者を追及できずに悔しがるというのも、良い経験・良いカリキュラムだろうと思います。まあ、合格率さえ確保できれば、ですが。