局面に応じて変わる間接事実の有効性

捜査段階で犯人を探し出したり、犯罪行為を発見したりするのに有効となりうる事実であっても
法廷において(合理的な疑いを超える認定をするのにあたって)有効となるわけでないものはいくつもある。
ここら辺に対する認識がないと有効でない間接事実を重視してしまう愚を犯してしまうことになるので気を付けたい。

これは間違えることはないと思うが、
例えば、前科などは、犯人疑いとして捜査の対象にあげたり、
前科があることから薬物親和性を推測してその挙動をさらに精査すると使用の疑いが濃厚になる
ということで、捜査に当たって大きな力を発揮する。

しかし、前科は法廷では使えない。
これは法律的関連性の問題があって、偏見の度合いが高くて事実の立証に使うのは難しいというものである。
顕著な手口の場合には犯人性の推認に使うことも許されなくないが相当に特殊な手口の場合に限局されている。

他にも、現場への存在可能性である。
日常と違う特異な車両が止まっており、その際に特異な現象(=犯罪)が起きた。
そうすると、その特異な車両に関わる人物が、特異な現象に関わっている可能性がある。
ということで、その車両の使用人物を特定するなりして、さらに捜査を尽くしていくことは
非常にオーソドックスな話だと思われる。

しかし、法廷においては、そのような現場への存在可能性という程度の可能性では
犯行とその人物を結び付けるには基本的に不十分と考えられることが多い。
他の人間の現場への進入可能性がない、あるいは、進入可能性がある人物は犯行をする可能性がないと
言えるような密室的な状態が立証出来て初めて、現場存在可能性が犯人性の立証などに役立ってくるとみることができる。

犯行と犯人との直接的でない結びつきを過大視しがちなところがあるとしたら、十分に気を付ける必要があるだろう。