自転車集積所からの窃盗

法的に意味が分からない記事が、報道然として堂々とネットに載っていたのでびっくりします。
 
>撤去自転車取り返しは「窃盗」 所有者側「民事問題」と反論
 
事案の概要は次のとおり。
>東京・練馬区在住の女性(41)は、地下鉄駅で駐輪場が分からず近くのレストラン敷地内に
>自転車を止めたところ、翌日には自転車が消えていた。
>その後、警察に窃盗の被害届を出したが、集積所に撤去されているのを知り、出向いた。
練馬区が業務委託している同区都市整備公社によると、女性の自転車は、
>盗まれたのか分からないものの、公道に放置されていたという。
> 女性は、公社から手数料4000円を求められ、盗まれたのに払うのはおかしいなどと考え、
>押し問答の末、金を払わずに自転車を持ち帰った。
>都市整備公社が警察に通報したためで、窃盗の被害届けも出された。
>女性は結局、書類送検され、起訴猶予処分になった
 
この点について、
起訴猶予となった女性は、起訴・逮捕がされていないことから、窃盗の前科・前歴がつかないことになる。
 
と記事は述べていますが、
起訴猶予は警察の記録にバッチリ残るため、
窃盗犯人としての前歴はしっかりと付きます。
 
さらに、
代理人の清水勉弁護士は、都市整備公社や警察の対応をこう批判する。
>「これは、つけを払って下さいという民事の問題ですよ。刑事事件にはなりません。
> 公社が自転車の占有権を持っていると主張しても、女性が自転車を貸したわけではないので、
> その根拠も怪しい」
 
と、弁護士が述べていますが(本当に弁護士が述べたのか記事がそう解釈したのかは分かりませんが、
刑法242条にあるとおり、自己の財物であっても、他人が占有している財物は窃盗罪の対象となります。
学説を考慮しても、区は公道の放置自転車を規定にのっとって撤去・管理したものと思われるので、
平穏な占有があり、窃盗罪の客体である財物であることは否定し得ません。
「女性が自転車を貸した」かどうかは、窃盗罪の成立に影響するものではないのです。
 
刑法242条  自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪(窃盗等。引用者註)については、他人の財物とみなす。
 
したがって、冒頭で
>「自転車取り返し窃盗」。こんな聞き慣れない名前の事件が、
東京都区部などを舞台にクローズアップされてきている。
とありましたが、集積所からの自転車持ち出しについて、
法律的には窃盗罪が成立するのは明らかであって、
なぜ、クローズアップされるのか、全く分かりません。
 
このように、どうみても誤りである記事を載せる
j-castとやらのニュースサイトの水準も自ずと知れるものだと思います。
 
また、清水勉弁護士というのは、日弁連の弁護士検索によると
お一人のみ、登録番号20722、さくら通り法律事務所の所属ということですが、
もし、本当に記事に書いてあるようなコメントをしていたとすれば、
この方に法律相談をするのは自殺行為というほかないと思います。
ちなみに、検索してみたら、
この弁護士(法律事務所)のホームページというかブログ(http://www.shimizulaw.jp/)があるようですが、
読む気はいたしません。
PS:ほかにもネット上の情報を見ると、
 準備不足の複数の訴訟を提起して、欠席を重ね、準備書面を提出できず、
 訴訟を取り下げるなどして依頼者に不必要な経済的負担をさせたということで、
 1998年10月6日処分発効の戒告を受けた旨載っていました。
 また、あちこちの警察の裏金問題の追及訴訟に積極的に関与しているようです。