保釈率の向上と再犯

保釈中の再犯がしばしば問題になる。
2つの記事に見られるように、これはここ最近増加している。
保釈を積極的に認めるようになったこと、
支援協会、全弁協などによる立て替え払い制度(前者の手数料についての問題は省略)が広まったこと
などがその理由だと思われる。

世間的には、犯罪者が裁判を受ける前に再び犯罪を起こすのは
司法機関の怠慢・見通しの悪さのせいであるように考えるかもしれない。
しかしながら、刑訴法は、「再犯のおそれ」を身柄拘束の根拠として認めていない。
また、保釈の条件に善行保持を定めることもできないという解釈が実務の通説である。

したがって、再犯を起こしたからと言って保釈の判断が誤りだったことにはならないし
そもそも、保釈金が没収されることもない。

その状態に違和感が大きいというのであれば諸外国のように
「再犯のおそれ」を身柄拘束の根拠とする法改正を行うべきである。


http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/703154
横領会社代表、保釈中に不当要求か
福井の日本刀横領事件被告
2018年9月20日 午前7時00分

 日本刀横領事件で9月18日に実刑判決を受けた福井市内の男=即日控訴=が昨年11月の保釈以降、法外な代金を請求したり、支払わなければ刀を返却しないと通告したりするなど、一連の事件と同様の手口を繰り返していたことが関係者への取材で分かった。今年5月に刀剣を預けた神奈川県の男性は「保釈により、自分が新たな被害者になるところだった」と話している。

 業務上横領などの罪に問われ福井地裁で懲役3年の判決を受けた男は、福井県福井市、刀剣類販売・修理会社「勝山剣光堂」代表取締役勝山智充被告(49)。2016年8月に起訴され勾留が続いていたが、17年11月に保釈が認められた。

 インターネットで被告の会社を知った神奈川県の男性は、刀の部品製作を依頼し、刀剣や登録証を送付。依頼時は1万円だった請求額が、最終的に6万円まで増額された。「4日後までに入金確認できない場合は代物弁済に同意したとして処理する」といった内容のメールが送られてくることもあった。刑事裁判になった一連の事件を刀剣送付後に知った男性は不安を覚え、6万円を支払い、刀剣と発注した部品の送付を受けた。

 最初に逮捕された事件の被害者である福岡県の男性側には8月以降、勝山被告側が刀剣を返却するとしながらも、「郵送での返却には応じない。期日までに本人が受け取りに来店するように」と69万円を請求してきたという。男性は要求に応じなかったが、その後、刀剣は郵送で返却され、請求書が同封されていた。

 いずれの事案も刀剣は返却されたが、「独自のルールを一方的に設定し、刀剣を取り上げる暴挙」という一審判決の指摘同様の手口といえる。

 刑事訴訟法では、保釈を許可しない理由の一つに、被告が被害者らの財産に害を加えるか、畏怖させる行為をすると疑う相当な理由がある場合を挙げている。保釈決定の理由や保釈金額を福井地裁は「裁判事項のため」として明らかにしていない。



https://www.asahi.com/articles/ASL8J2SPQL8JUTIL001.html
保釈中の再犯で起訴、10年前の倍に 上がる保釈率背景
飯塚直人、伊藤和也2018年8月27日07時24分

 刑事事件の被告が保釈されるケースが増える中、別の事件を起こして起訴されるケースも増えている。2016年は162人にのぼり、10年前と比べて倍増。再犯を防ぐ対策の必要性を指摘する声もあがる。

 司法統計によると、一審の判決前に保釈が認められた被告は、昨年の1年間で1万5230人。勾留された被告全体に占める割合(保釈率)は31・3%で、10年前の2倍を超えた。罪名別では強制わいせつなどの性犯罪が38・7%。覚醒剤取締法違反が29・3%、窃盗が17・9%だった。

 一方、保釈中の別の事件で起訴される被告も急増。犯罪白書によると、16年の162人は前年より26人減ったものの、06年の80人からは倍増した。覚醒剤取締法違反が67人と最多で、次いで窃盗の48人だった。