律のお勉強(中国法制史研究刑法・仁井田陞著 参照)

いくつかあった面白い例。

罪刑法定主義的であること。(類推適用は許されていたが)

・故意責任と過失責任の区別
(漢律)「過失殺人不坐死」(過失致死は死に坐さない=故意責任と過失責任の区別があり、量刑の程度も異なる)
*過失傷害は3歳刑(懲役3年のこと?)の例もある

・結果的過重犯がある
傷害致死は殺人と同じ量刑となる法典あり)

危険運転致死っぽい規定もあったこと(226p)
(唐の雑律)「諸於城内街巷及人衆中、無故走車馬者、笞五十、以故殺傷人者、減闘殺傷一等」


責任能力の制限
唐律だと、
 90歳以上7歳以下は絶対責任無能力者。
 70歳以上15歳以下および廃疾者にして流罪以下を犯したときは贖銅を納めしめ、80歳以上10歳以下および篤疾者は、死刑に処せられるべき反逆罪、殺人罪をおかしたときは上請してその罪を定め、盗罪および傷害罪を犯したときは贖を納めしめるにとどまるとされ、これらは限定責任能力であった。

・行為の発展段階による責任の差別
(賊盗律)「諸謀殺人者徒三年、已傷者絞、已殺者斬」
(殺人を計画した者は懲役3年、殺人の計画に基づき人を殺した者は絞首刑、計画に基づき人を殺した者は斬首刑)

併合罪の吸収主義
(唐律)「二罪以上倶発、以重物論」
 (2016年11月15日訂正→併合罪ではなく、観念的競合のようにも思える。
   それであれば日本の現行刑法が科刑上一罪としていると同じ処理である)

今とは明らかに異なる特徴としては、例えば、儒教的な発想が法律のつくりにも大きく影響していると思われる点。
卑属が尊属に対して犯罪を犯した場合が非常に重くて(すぐ死罪になる)、
逆に尊属が卑属に対して犯罪を犯してもだいぶ軽い(ちょっとしたことだと処罰されない)。