判決同士の矛盾1

諫早湾干拓事業について興味深い決定が出た。

国に湾の水門を開門するよう義務付けた確定判決があるところに
国に湾の水門を開門してはならないという仮の義務付け(差止め)を命じる決定が出た。

報道によると決定文は600ページにもおよぶそうなので、前の確定判決と比較したりする気も起きないが
矛盾する主文の処理という点に絞って考えたい。(後で真面目に主文だけは見比べたい)

実のところ、判決自体が矛盾することはあり得る話である。
訴訟は当事者同士の争いなので、馴れ合い訴訟なんかをやればすぐに矛盾した判決は作れる。

例えば、AB間では不動産の所有はBにあるという判決が出て、そのあとにAC間では不動産の所有はCにあるという判決が出るといった場合。
これでは不動産はBCどちらのものか分からないように思える。
しかし実際には裁判の効力はその当事者間でしか生じないため、
AはBにもCにも相手が所有者であることを言えないというだけであり
BC間では優劣が定まっていないのである。

もし、このBCが二重譲渡を受けた買主同士であれば、その優劣は先に所有権移転登記を受けた方が確定的に所有権を取得することになる。
そして負けたほうはAに対しては所有権の移転を受けられなかったことを理由に損害賠償を請求することになるだろう。