【法曹回想話】宅調制度

宅調制度とは裁判官に特有の制度で、役所に出勤することなく
自宅で資料の調査や判決の起案などをするものです。

以前、ある裁判官が宅調中にゴルフに行って注意されたそうです。
その後は誤解を招かないようにと、できるだけ有給を取ったり、
そもそも宅調を利用しないというのが推奨される流れになり、
今も使う人は家庭の都合で自宅で起案などをする必要がある人か
仕事の進捗が順調で、資料読みを中心とする宅調をしても困らない人くらいで、
大半は、会社員から見れば当たり前の話ですが、日々出勤しているようです。

この制度、客観的にみると、
都市部では必ずしも近郊に官舎の用意されない裁判官にとっては
通勤時間の短縮になりそのぶん仕事に費やせる時間が多くなる面があり、
個々人が自己の都合にあわせた就労形態を柔軟に営めるようにも思えます。

他方、出勤しないと傍目にはさぼっているとみられてしまったり、
起案をするために記録を持ち出す場合には紛失等の危険もあります。

ただ先程述べたとおり消え行く制度のようですので、その点を深く掘り下げてもしょうがないかもしれません。

さて、この制度のそもそもの始まりですが、ものの本などによれば、
戦後のある時期までは、一つの執務机を二人の裁判官が共有していた
(左の引き出しはA裁判官が、右の引き出しはB裁判官が使うという)時代があり、
二名の裁判官の開廷日はずらしてあってA裁判官が裁判をしている日には、
B裁判官には居場所がなく、その逆もしかりでしたので
宅調日というものが必要やむを得なく存在したということのようです。

裁判所という機関においてすら必要な備品が用意されていない時代があったことには驚きました。