朝日新聞連載小説「沈黙の町で」

最初は少年事件を取り扱った話ということで期待をしていましたが、
どうも、先日も、用語の誤りひいては制度理解に問題のある表現があり、先の展開が知れている気がするのと、
話の盛り上げとか展開的にもだらだらとしているばかりで、そろそろ飽きてきました。
 
 
常勤お用語法的には、「起訴」・「不起訴」、「公判」という成人事件の表現そのままという誤りがあり、
少年事件だと、起訴に該当するのは家庭裁判所への「送致」
あるいは(嫌疑不十分による)不送致(正式な用法は知りませんが)です。既に指摘した通り、
犯罪の嫌疑があると考えた場合には全件送致主義が採用されており、検察官には裁量的な要素はありません。
また、公判というのは刑事事件における公開法廷というイメージ
(その期日を公判期日などといいますし、民事では口頭弁論期日とか弁論準備期日(弁論準備手続期日))ですが、
少年事件では家庭裁判所における非公開の「審判」が行われます。
少年が「公判」に行くとしたら、検察官送致(少年法20条)の場合ですが、
少年実務的に14歳の少年を検察官送致にするなんて考えられません
(14歳の少年が既に完成された一個の人格を形成しているとは到底見難い)ので、
多分審判の間違いでしょう。
 
検察・家裁周りの知識がいい加減過ぎるので、その手前辺りでメインは終わる話なのだろうと思いますが、
そうすると、家裁の職員(調査官・裁判官)などの描写について期待していた身としては残念ですし、
仮に分量を取って書いても、内容的に変な調査官・裁判官などが描かれそうと思えてがっかりです。
 
また、話的にも、客観的な証拠がなく(現場から少し離れたところの防犯カメラの画像は出ていた程度で)、獲得する気もなさそうなのに、否認した被疑者相手の供述をどうこうというあまりぱっとしない捜査風景を書いてばかりです。そんなに薄い証拠で自白頼みの捜査をするだろうという作者の見立てに、いまいち乗れないので、つまらなくなって感じてきています。周辺の人々のいろいろな話もありますが、はっと目を見張るようなエピソードも出ないままに話が流れて行ってしまっています。
 
というわけで、そろそろ読むのを辞めるかも、です。