論点のずれた冤罪主張

>袴田死刑囚の供述テープ存在=弁護側は開示要求―再審請求審
時事通信 11月16日(水)21時3分配信
> 静岡市清水区(旧静岡県清水市)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された
袴田事件の第2次再審請求審で、静岡地検袴田巌死刑囚(75)の供述を録音したテープが存在すると
静岡地裁に回答したことが16日、分かった。袴田死刑囚の弁護団が明らかにした。
>地検はテープの開示を拒否している。
> 弁護団の小川秀世弁護士は「自白の任意性が争われている中での重要な証拠。
>裁判所には開示の勧告を強く求めたい」としている。 
 上記のとおり、弁護団は、自白の任意性(自白が証拠として採用される要件である)が事件の争点になっている
としている。
 ところで、この点に関する最高裁決定の判示は次のとおりである。
 
<平成20年03月24日 最高裁判所第二小法廷決定 集刑 第293号747頁>
>刑訴法435条6号の証拠の明白性を否定した原判断が是認された事例(いわゆる袴田事件再審請求)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080325144844.pdf
>(3) また,所論は,確定判決の犯人性認定が申立人の自白に依拠しているとの前提に立ち,
>新証拠によれば,逃走経路等,重要な点で申立人の自白には真実に反する点があって信用できず,
>この自白を除外すれば申立人の犯人性認定に合理的な疑いが生じると主張する。
>しかし,確定判決は,前記のように自白を罪となるべき事実を認定する証拠とはしておらず,
>自白を除いた証拠のみによって申立人の犯人性が認定できるとしているのであるから,
>所論は,そもそも再審事由の主張として失当である。
 
 最高裁によると「確定判決は,前記のように自白を罪となるべき事実を認定する証拠とはしておらず,
自白を除いた証拠のみによって申立人の犯人性が認定できるとしている」のである。
 
 自白を証拠とする場合に必要とされる任意性、これが有罪無罪の争いをするときに争点となるのは、
その証拠の採否が問題となっている場合である。しかしながら、本件では、自白は証拠として採用されておらず、
検察ももはやこれを証拠として用いる予定はなさそうである。
 とすれば、任意性の有無は有罪無罪の結論を導くのに不必要な争点であるというのが論理的帰結となる。
 
 裁判には多くの公務員が関与している。当然その給料は税金である。
論点として意味のないと思われる部分を強調してあれこれ争うのは、無益どころか有害であろうと思う。
また、本質にかかわらない争点をこねくり回している弁護団というのも、
どれだけ被告人を無罪に導こうとしているのか、単に密室での取調べを糾弾するネタとしているだけではないか、
そんなふうにもふと感じてしまう。
 
 袴田氏が有罪か無罪かは私には知るすべもない。
ただ、裁判所はこれまで全ての裁判で有罪を維持し、
自白を証拠としない間接事実の積み上げによってその判断を導き出している。
であれば、弁護団としては、裁判所の間接事実の積み上げを否定する事実、
あるいは論拠等をぶつけていくのが本筋であろう。