前日のクローズアップ現代の感想

司法制度改革に関連しての話でしたが、
即独弁護士の話→司法試験の合格率の低さの話→福祉現場を回る弁護士の話
と話題が流転して行っており、全体的な順を追った流れになっておらず、
また、ゲストの話も何を言いたいのかよく分からないもので、
全体としての、狙いというか要領の掴めない話になっていました。
 
個別に印象に残った点の感想を書いておきます。
まず、即独弁護士。理論はやっている、実務はないので、という話ですが、
理論でさえも司法試験及び修習だけでは習得には不十分だと思いますので、
問題点を問題点として把握しないままに失敗をしてしまっているということはないのだろうかと
心配になりました。
前に取り上げた金融機関の口座差押に関する最高裁決定は
60期の弁護士が不服申し立てした結果だと耳にしましたが、これについては
十分な材料ももたないままに安易に申し立てた物だと批判する人もネット上で拝見したりしましたが、
あまり深くまで気付かずに、大きな転換点のきっかけを作ってしまう面もあるかと思います。
まあ、先輩なりボスの弁護士がいたら一切大丈夫というわけでもないとは思いますが。
 
また、司法試験の合格発表の風景が移されており、
そこである合格者が「国の役に立つ弁護士になりたい」と話していました。
旧来の言説だと、国=行政(・裁判所)であって、弁護士は行政(・裁判所)と闘って、
市民の権利を実現する立場にあるんだという発想が当たり前だったと思います。
弁護士として「国の役に立つ」というのは、旧来とはかなり発想の違うものがでてきたように思います。
さて、この人の考えでは、弁護士としての仕事で国の役に立つというのはどういう役割を想定しているのでしょうか。
国側の訴訟代理人であれば、通常、訟務検事が活躍をしております。
紛争の解決者・裁定者は裁判官であって、国家の規律は裁判所が担っているという面があります。
弁護士は、依頼者の立場に立って行動する結果、
渉外事件などで外国で勝訴判決を取るなどし、国益に結びつくこともあるかもしれませんが、
基本的には依頼者のために行動するものである以上、国の役には直接には立たないように思えます。
ことによると、企業内弁護士ならぬ、省庁内弁護士を目指している方なのかも知れず、
それなら弁護士として国の一員として役に立つということになろうかとも思えました。
いずれにせよ、その人の発言の真意がどこにあったのかはよく分かりませんでした。
 
最後の方で、福祉関係の現場に足を運んで法律以外のことで、
当事者の酒量を心配してあげるなどしていました。それ自体は善良で道徳的なふるまいだと思います。
、一定程度の財産がある人に対して、なにくれと世話を焼くことであれば、
財産管理や処分の際に仕事がまわってきたり、予防的に紛争を解決したりということで、
こういった福祉的な観点・法律相談の訪問販売的な行為を取り込めたら面白い、
そう言う人を増やしたいというメッセージだと思いました(増員賛成論)。
したがって、これ自体は興味深く感じましたし、
そういう人を増やすのに弁護士の増員が必要という流れだとしたら
まあ分かるなあという感じでした。
 
しかし、どうも他のところの情報をみると、
その方は最近弁護士になったというわけではなく、しかも、法テラスかどこかのスタッフ弁護士で
経営の心配をしなくてよい立場にいる人だそうです。
そうなると、ああいう福祉的なことは銭金の心配をしなくて良い
特別な立場の人にしかできなさそうなことのようでした。
そこらへんの背景なしに話が出された点には少々騙された感じがしました。
現実にはそんな便利屋的な弁護士なんて生み出せるものじゃないんだなあ、と。
 
いろいろと考えるところのあった番組でしたが、何にせよ、法曹界の今後の見通しは難しそうと感じました。