構造複雑化の質的な差異として現れる創発的特性

東京大学が「因果を打ち破って充電」する量子電池を発表

(※量子力学の扱う小さな世界では時間は存在しないとする意見も存在します。この意見では「時間は巨視的なシステムの創発的な特性」として理解されています。つまり小さな世界では時間が存在しないものの、システム全体が大きくなるにつれて時間の特性が後付けされる(創発される)と考えられています)

 

量子電池に関する解説記事の中の特に興味深い部分があったので引用した。

 

ある単純なシステムには存在しない、必要ないルールや機能や秩序(特性)がある。存在しない、必要ないものなので単純なシステムの中にいるものにはそれがなにか気づかない。

しかし、システムが高度化複雑化することで、今までにない特性である時間が生じる、これが量子力学からニュートン力学へと移行するということなのかもしれない。

これを人間の脳に当てはめるなら、元々の様々な事象に対処する個々の機能には意識は存在していない。ただこれらの機能の一定以上が集まるなどして脳が複雑化した結果、統合体としての特性としての意識を獲得することになった(インタープリターにより)ということかもしれない。

そして、人間が「とっさの」行動について、何も考えていないというのは自然なことであって、意識は因果的に先行していないということがむしろ自然で科学的な裏付けもあるのかもしれない。そして「とっさの」行動は、意識が存在しない故に故意がなく無罪、となるわけではなく、ある種の出来事に対する反射的なものとして反社会的な行動を取るような機能を構築してしまった、という人格的責任に(故意責任の)非難を向ければよいのではなかろうか。

狭山事件の記事に接して

女子高生殺人の証拠は「脅迫状」、でも逮捕された男性は文字が書けない…犯人と決めつけた捜査は「被差別部落の出身」だからか 無実を約60年訴える「狭山事件

https://news.yahoo.co.jp/articles/85848d2297f37b6f36f65c15935fb7da797155c1

 

袴田事件の公判が続く中で、他の冤罪主張事件にも関心が高まっているのか、こういう記事が出ている。

ただ、この狭山事件は 平成17年3月16日最高裁決定が55頁にもわたる長文で、受刑者(申立人)側の主張を排斥し(例えば、申立人は上申書を裁判所に出すなど文章を書ける人間であること)、多忙で、それ以外にも有罪の根拠のあることをしっかりと示しているもので、個人的な感想としては、まず冤罪とは考えられない事件である。

この事件が冤罪事件のひとつとして強く取り上げられるのは、これまた個人的な感想だが、受刑者(申立人)側の出自が、一部の人間からは特別視されて優遇されているからだと思われる。

ひき逃げと殺人と

「殺人事件だと思っていたら捜査の仕方はガラリと変わっていたはず」別府ひき逃げ事件警察の初動捜査に弁護士が苦言

https://news.yahoo.co.jp/articles/9df205743f1a0841c10eacec93d22159c6df58de

 

ひき逃げは過失ではねた後にはねたことを分かって逃げた場合、殺人は死んでも構わないとして、この事件であればそのまま車を走らせてはねた場合、に成立する。

赤信号待ちのバイクを後方から時速100kmで進行してはねている事案だが、走行状況等を客観的に見てバイク(人)を認識していたか、あるいは、道路にバイク(人)がいようが何があろうがはね飛ばして進むつもりだったと言えるようなものだったかが必要になると考えられる。

一般的な道路での事故では、相当な速度超過があろうが、赤信号無視をしていようが、自分が事故で死傷するつもりはなく事故を起こしたいともならないだろうから故意をとるのは難しい。赤信号無視を殊更無視しているので、赤信号待ちをはねた場合にも危険運転の結果人が死傷したといえれば危険運転致死の適用もあるかもしれない。これも赤信号見落としだと適用できないが。

遺族はルール外れの運転態様や結果の大きさから殺人罪の適用をと望む心境は分からないでもないが、現実の事実認定、法適用からすると難しいことを求めているというのが率直な感想になる。

相隣関係の法律問題

土地所有権は時効取得しているけれど、空中の竜やひさしの部分については、空中地役権の時効取得の主張はしなかったのか、それとも成立しないものなのか、ちょっと気になった。

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/ea0d6ab5adb2893593636850dc1ad32982b1a106

龍のしっぽの部分とひさしが隣接する土地にはみ出しているとして3年前、土地を所有する不動産会社が撤去を求めて裁判を起こしました。

金龍ラーメン側は、ひさしの下のテーブル席が失われるほかブランドイメージが低下するなどと反論していました。

10月26日の判決で、大阪地方裁判所は土地を10年間占有すれば自分の所有にできる民法の「時効取得」を理由に金龍の土地所有を認めた一方で、はみ出した龍のしっぽ部分とひさしは「不動産会社の土地所有権を侵害している」として金龍側に撤去を命じました。

袴田事件

再審開始決定が出ている以上、無罪確実だという記事で埋め尽くされているし、おそらくそうなるだろうと思いつつも、開始決定を維持した高裁決定が警察のねつ造に強く言及している点が若干引っかかる。

裁判途中で味噌タンクから発見されたとされる5点の衣類等が問題となっている。

もちろん、元々この事件の自白調書が無理やり作成された信用性の全くないものだったということで、静岡県警の担当警察官がねつ造でも何でもやる者だということなので、何をどう言おうが、もはや、裁判途中で発見された5点の衣類等について、ねつ造の疑いは払拭しきれないということになるかもしれない。

ただ、味噌タンクに後から入れたとなると、警察官が直接行って上から放り投げるとしたらほとんど味噌が付かない状態になって味噌が全体に付着しないのでは、とか、警察官の訪問があれば誰か覚えているだろうから皆に聞いて回ったりしているのではないかとか、それで何もなかったら警察官が入れたのかな、と。又、従業員の協力者がいたならこれだけの事件で人の口には戸が立てられないという奴でどこかで噂になっていそうな気もする。まあ、この点はいろいろ考えられそうで何とでもなってしまいそう。

一番気になるのは、警察としてはわざわざパジャマ姿で殺人に及んだといった自白調書を取っていたのに、別の衣類が犯行に使われたような状況を作り出して、その自白調書の信用性を失うような工作を行うのだろうか、という疑問である。高裁決定もこの疑問には答えていない気がする。当時の捜査が自白偏重でしばしば、自白の強要が行われたり、客観的な証拠を軽視して誤ることはよく言われている。それなのに、自白を潰す真似を自らするのか、するような事情があったのか、例えば、裁判所が自白調書を採用しないことが第三者的に見て明白になっていたのだろうか、と思わされる。

この他、被告人と5点の衣類を結びつける端布については、被告人方から見つかったものでない可能性があるという高裁決定なので、そういう証拠関係なのだろう。ただ、どこから入手されたものか次第では、被告人に関わる味噌タンクから血まみれの衣類が出てきた意義を余り損なわない余地もあるかもしれない。捏造の手がかりかもしれないし、そうでないということになるかもしれない。

以上は警察のねつ造を想定した検討だが、第三者のねつ造の可能性はまたどうなのだろうか、とは思う。

 

 

最高裁の参議院選挙合憲判断

都道府県からの代表者という観点がようやく最高裁判決に現れたのは選挙訴訟の中での一歩前進だと思われる。

実際の選挙結果を見なくとも、合区にされた地域の「投票有効感」が大きく下がり、投票率が下がって白票が増えることは目に見えていた。

律令制から続く、少なくとも明治期には枠が定まった歴史ある行政単位を軽んじて、形式的な数字的平等に拘りすぎるのは、問題であったと思われる。

ただ今後田舎の過疎化がさらに進む中、投票価値の平等をある程度確保するには、都道府県よりも広いブロック制、全国区制を導入して地域代表的要素を捨象するか、予算を無駄に使うことになるが議員の人数を増やすかのどちらかに結局は進むしかなく、従来の日本の枠組はどうしたって変容せざるを得ないのだとは思う。