★業務上過失致死傷被告事件
平成15年1月24日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄自判
□判示事項 黄色点滅信号で交差点に進入した際,交差道路を暴走してきた車両と衝突し,
業務上過失致死傷罪に問われた自動車運転者について,衝突の回避可能性に疑問がある
として無罪が言い渡された事例
(※黄点滅・赤点滅交差点での衝突事故。
左右の見通しが利かない交差点に進入するに当たり,何ら徐行することなく,時速約30ないし
40キロメートルの速度で進行を続けた被告人の行為は,道路交通法42条1号所定の徐行義務を怠った。
被告人車の左後側部にA車の前部が突っ込む形で衝突した事故であり,本件事故の発生については,
A車の特異な走行状況に留意する必要がある。すなわち
指定最高速度である時速30キロメートルを大幅に超える時速約70キロメートルで,足元に落とした
携帯電話を拾うため前方を注視せずに走行し,対面信号機が赤色灯火の点滅を表示している
にもかかわらず,そのまま交差点に進入してきたことが認められる
(理屈として結果回避可能性があるとしても、現実には),対面信号機が黄色灯火の点滅を表示している際,
交差道路から,一時停止も徐行もせず,時速約70キロメートルという高速で進入してくる車両が
あり得るとは,通常想定し難いものというべきである。しかも,当時は夜間であったから,たとえ
相手方車両を視認したとしても,その速度を一瞬のうちに把握するのは困難であったと考えられる。
こうした諸点にかんがみると,被告人車がA車を視認可能な地点に達したとしても,被告人において,
現実にA車の存在を確認した上,衝突の危険を察知するまでには,若干の時間を要すると考えられる
のであって,急制動の措置を講ずるのが遅れる可能性があることは,否定し難い。)