【執行】全店一括順位付け方式を否定する最高裁決定後の高裁決定

【執行】全店一括順位付け方式を否定する最高裁決定 http://blogs.yahoo.co.jp/nekonomanma/62794832.html
に関係して。
 
まず、全店一括順位付け方式が認容された場合の実務的な取扱いの大変さについては
金融法務事情1931号http://store.kinzai.jp/magazine/AH/201110-1931.html の
II 全店差押えと実務の実情(三井住友銀行 三上 徹) に、おそらくは営業秘密という制約があるものの、
わりあい詳しく載っていました。
どうやら、これまで認容されてきた全店一括順位付け方式の差押債権目録だと
たまたま1件であればどうにか対応可能でも、これが複数件あるいは何十件と重なると
(そして、大きな消費者金融の口座に関しては過払い金の問題で、1日で数十件来ることも十分想定できる)
とても対応不可能と思えるような内容でした。
 
ところで、http://www.aoi-law.com/blog/index.php?itemid=35 によれば、前記最高裁決定後である
>平成23年10月26日付で,東京高裁が,
>「第三債務者の複数の店舗に預金債権があるときは,
>預金債権額合計の最も大きな店舗の預金債権を対象とする。」
>という差押債権の記載方法を「特定」があるとして申立てを却下した東京地裁の決定を取り消したのである。
という話が出ています。
決定の詳細が不明ですので、何ともいいがたいところがありますが、
最高裁の射程という意味では、直接には射程内にあるとはいえないとは思います。

この問題については、
金融機関の規模、債務者の保有する見込み口座数、
当該類型の包括的差押による金融機関の負担、
包括的な差押が認められた場合に同様の差押を行おうとする債権者の見込み数などを考慮して
金融機関が対応可能であるかが、重要なポイントだと思っています。
 
したがって、いわゆるメガバンクに対する差押であって、
合併等を重ねている大規模消費者金融で口座を全国に大量に保有しかつ同一性の判断も容易でない場合で
過払訴訟などで多くの(小規模~中規模)債権者を抱えているという場合には、
「預金債権額合計の最も大きな店舗の預金債権を対象とする」というのは、
仮差押・差押の有無で債権額の判断に影響するようなものは到底難しいと思いますし、
そのような限定をしない場合であっても、先の三井住友銀行の記事をみるに、
金融機関の対応能力として微妙というかやはりかなりきつい気がします。
 
金融機関がこの件で最高裁に判断を仰ぐか、単発の事例であるのでひとまず様子を見るという立場をとるのか
分かりませんが、なるべく広く有効性の高い差押債権目録であって、かつ金融機関が対応可能というラインが
何らかの形で合理的に示されることを期待します。
前回は立法という話もしましたが、それは実際問題として速度感を欠き、妥当性も得られないおそれがあり、
宜しくないかもしれません。あるいは、例えば、日弁連と金融機関の団体とが、
合理的な差押債権目録のガイドライン(暫定版)につき議論を行い、折衝して、
一定の書式を共同発表するようなことができれば、ひとつの実務上の落ち着きどころを
得ることができるのではないかと思う次第です。
 
ともかく債権回収という重要な場面での話であってその動向については今後も目が離せないテーマですね。