東電に免責不適用は誤り…株主が提訴、国は反論

東京電力福島第一原発の事故を巡り、東電株を1500株保有する東京都内の男性弁護士が、
原子力損害賠償法の免責規定を東電に適用しなかったことで株価を下落させたとして、
>国に150万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こし、同地裁で20日、口頭弁論が開かれた。
>国側は「東日本大震災は免責規定が適用される『異常に巨大な天災地変』には当たらず、
>東電が損害賠償責任を負うべきだとした対応は適法だ」と、これまで政府が示してきた見解と同様の主張をし、
>請求の棄却を求めた。
 
この事案は政府が東電の免責を認める判断をしたら、
その場合にも弁護士などによって訴訟が起こされていたことでしょう。
いずれにしても訴訟で争わなければならない国側は大変というわけですが、
公共機関の判断にはそういう、判断すれば敵を作るみたいな事案が少なからずあるものだと思います。
 
この裁判で難しいのは、法律は究極的には紛争解決機関である裁判所の判断によって確定されるものとなり、
したがって、東電の免責も、原子力損害賠償法の解釈という次元にある限りでは、行政裁量というのではなく、
裁判所の法律解釈にゆだねられることになりそうだということです。
そうすると、複数の訴訟が係属すれば複数の地裁で判断が出て、場合によっては判断が分かれることになり、
地裁から高裁、高裁から最高裁と集約されて行くことになるでしょう。
最終的には最高裁で判断が出されないと紛争が根っこからは解決されませんので、
最高裁の判断が出るまで相当の時間が経過してしまいます。
(場合によっては地裁から飛躍上告で最高裁に行くこともあるかもしれませんが、それでも時間はかかります)
そうなると、その間、下手をするとこれまでの仮賠償のスキームにも支障が生じて、
保障を受けられなくなる可能性もないとはいえません。
 
訴える権利や自由があるのはそのとおりですが、大局的にみると免責訴訟を提起するという判断自体が
社会全体的な視点から見ると適切なものかは議論の余地があるかもしれません。
 むろん、単純な当てはめ論としては、免責相当か否かはかなり微妙な問題ではあると思うので、
それゆえに一層弊害部分が気になってしまうというわけなのですが。