読書感想

『人間はウソをつく動物である』 伊野上裕伸 著

保険調査員の事件簿という副題がついているとおり、
法律そのものではないが、法適用の前提となるべき事実調査の点で非常に興味深い本で、
保険を詐取しようとする相手に対して、保険の調査員が
どのような調査を行って、あるいは断念したか、相手はどうふるまってくるのかといった様子が
具体的なエピソードで語られている話だった。
自動車事故(事故や症状の虚偽・ごまかし?、日付の遡らせ?)、火災事故(放火?)、死亡事故(自殺?)、盗難(ずさんな管理体制?)など、人はよく悪知恵が働くものだと改めて感心した次第である。

なんにせよ、人から話を聞くことは難しい。
自分が話を聞く立場になることもしばしばあるが、その際には一定の役割・背景をもっているので、
そこから外れて全くの個人としてその時点での対立当事者と対峙して、ひるまず、切り抜けるとなると
相当な人間力を必要とするのだということを改めて強く感じさせられた。

そういった力を備えないまま日々を過ごしてしまうとその先がどうにも心配だとふと思う。
どこかで訓練をしないといけないかもしれない。