無罪判決の被告人が真犯人とみられる場合について

有罪判決の被告人が無実だということがあるように、
無罪判決の被告人が真犯人とみられる場合もあるようです。
 
この点、結果として誤った判断を裁判所がしたとしても、
事実認定行為の高度・複雑・玄妙さを考慮すれば
その国家行為を賠償の対象とするのは相当ではないと思います。
 
それはさておいても、「証拠不十分だから無罪」という命題を越えて、
なぜ、誤判になるのかということを、冤罪の場合の反対のケースからも
詳しく分析していくことで、事実認定のあり方、考え方を深められるのではないか
とふと思います。
案外、何かそういう本も出ているのかもしれませんが、
冤罪本に比べると世間で広まっていないというか話題にされていないような気がします。
 
それと、有罪が無実ならとんでもない話として大々的に糾弾されるのに(これは当然のことですが)、
真犯人が無罪になっても誰もが平然としている感じなのは時に違和感があります。
先ほど述べた通りの命題に沿って、「証拠不十分だから、捜査機関が悪い」というケースもあるのでしょうが、
捜査・証拠収集の困難さ・偶然性に照らせば不可能を求める場合であったり、
通常それ以上得られるものがない程度にまで捜査しつくしたケースもあるかもしれません。
ある覆面座談会で、弁護士が「被告人本人から「実はやってたんですよ」なんて
告白されて空しさを噛みしめたこともある。」という発言があって、むなしさをかみしめる程度の話で済んで
その事件の被害者は耐え難いほどの苦痛を受けているかもしれないのになあとふと想像してしまったりもしました。
 
まあ、弁護士にとっては他人事であるし、
むしろ、その職業上、出た結論は自分のものではないという立場こそが大事なのかもしれませんが。
 
>「何のための再捜査」 宮古死亡事故
>被害者の母 怒りあらわ
> 2011年2月2日 09時30分 
 > 【宮古島】「新たな被疑者はいない―」。
>県警の再捜査の結果は、無罪判決が確定した女性以外に被疑者はいないという判断だった。
>検察が上告を断念した今、刑事裁判での真相解明はかなわない。
>同事故で死亡した少年の母親は1日、沖縄タイムスの取材に対し
>「息子の命を奪った犯人は確実にいるのに、誰も罪に問えない。
>こんなことが許されるわけがない」と怒りをあらわにした。
 
>再捜査で無罪女性運転認める
>3年前、宮古島市で車を運転中にバイクに衝突し、高校生を死亡させた罪に問われていた女性が、
>裁判で無罪が確定したあとの警察の再捜査に対し、事故当時、自分が車を運転していたことを
>認めていることがわかりました。
>警察は無罪判決とは逆の再捜査結果をまとめる方向で最終的な調整を進めています。
>この事故は平成20年、宮古島市の国道で6人が乗った車とバイクが衝突し、
>バイクに乗っていた当時17歳の男子高校生が死亡したものです。
>車を運転していたとして介護士の女性が自動車運転過失致死などの罪に問われましたが、
>福岡高等裁判所那覇支部は去年8月、「いっしょに乗っていた女性の娘が車を運転していたという方が
>事故の状況に合っている」などと指摘し、高校生を死亡させた罪については
>女性に無罪を言い渡していました。女性の無罪が確定したことを受けて、警察は事故当時、
>誰が車を運転していたのか、女性の娘ら同乗者から事情を聞くなどして再捜査を進めてきましたが、
>警察に対して、この女性が「事故当時、車を運転していたのは自分だ」と話していることがわかりました。
>また、女性は被害者の遺族に謝罪したいとする意向を示しているということです。
>警察は現在科学的な鑑定の結果が出るのを待っている段階ですが、
>「事故当時車を運転していたのは介護士の女性だ」とする、
>無罪判決とは逆の捜査結果をまとめる方向で最終的な調整を進めています。
 
>月刊チャージャー 覆面座談会第24回 弁護士が語る「世の中有罪だらけです」
>首都圏で活躍する現役弁護士3名。
>ミイラくん 被告人の人権を守るためって使命を信じて、一生懸命やってるんだけどね。
> 一度、否認している被告人のために頑張って、無罪判決が出た後で、
> 被告人本人から「実はやってたんですよ」なんて告白されて空しさを噛みしめたこともある。