漢籍セミナー「罪と罰ー伝統中国における法と裁判」

「礼教の刑罰ー流刑」では、儒教の概念とその定着が中国の制度史に大きな影響を及ぼしているのだと感じました。
 「五刑」という概念が先にあって刑罰を五種類考え出そうとして、そのために「流刑」というカテゴリーを作り出すというのも本当かと思うような感じでした。
 流刑に実用性があって、それを根拠づけるためにもってきたのかと思って聞いていたのですが、もともと流刑は労役刑の一種でしかなかったというのが魏晋~隋唐よりも前の時代の話だったようです。
 死刑>流刑>徒刑という2番目に来るという発想も、現実的負担からはどれだけ差異がある(死刑の次の重さの刑だ、というほど)かという指摘も、確かに頷け、不思議な感じがしました。

 ただ、中国史における儒教の影響度合いが全然ぴんとこないため、礼教の刑罰としての流刑という論説には、なるほどそのとおりという感じでそのまま受け取るのには、いささかためらいを覚えました。


「お上を訴えるーー訴訟文書と『‘糸糸’絹全書』」では、最初の方が訴訟社会の成熟等に関することで主題に入る前あたりで眠くなってしまい、あまりはっきりと覚えていません、ごめんなさい。
とはいえ、訴訟外で裁判結果と闘うために文章化して、いろいろとやるというのは、現代的な裁判闘争、政治的意図に基づく裁判との連続性があるというか延長線にあるもののように思われ、訴訟にまつわる事象として近代的な変化なのかもしれません。


 何はともあれ、約半日のセミナーでしたがいろいろと考えさせられる点が多いもので、とても参考になり、有意義な時間となりました。