非嫡出子相続分規定違憲決定について

非嫡出子の相続分が嫡出子の半分しかないとされていた規定について、
先日(最高裁大法廷平成25年9月4日決定)違憲決定がでました。

(上記決定の裁判要旨)
 1 民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していた
 2 本決定の違憲判断は,平成13年7月当時から本決定までの間に開始された他の相続につき,民法900条4号ただし書前段の規定を前提としてされた遺産分割審判等の裁判,遺産分割協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼさない

 この規定については、前回の著名決定時にぎりぎり合憲とされるような内容だったことから
法曹界では、遅かれ早かれ違憲判決が出ると予測されていたものですが、
ネット上の一般人の反響ではかなり批判的なものが多かったです。


yahooコメントはいうに及ばず
発言小町http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2013/0905/615857.htm)その他でも、
批判的な見解が多かったと思います。

いくつかあげてみますと。

・非婚化が進む
 →非婚化は、結婚によって幸せになるとは思えない現実が散見されるからでしょうね。
  婚姻により配偶者控除を受けられたり、会社によっては扶養手当が出たりなど、婚姻を優遇する措置が取られていて、それが違法視されるようなことはなかったわけです。
  婚姻の拘束力が強すぎる(簡単に離婚できない、自分の年金を分割される、多額の慰謝料・分与を要求される)と思っているために、結婚をしたくないというケースもあるかもしれません。


・嫡出子は介護義務・扶養義務を果たしている(非嫡出子は果たしていない)。
 →介護・扶養を果たしている人が多くもらうことを判例は認めています(ただ、顕著なものに限る。)。
  その観点自体は、不当なものとは思えませんが、法定相続分の段階で半分にしておくことに合理性があるようにも思えません。
  嫡出子の兄弟間でも、扶養・介護の義務は果たさない(のに権利を強く要求する)、あるいは最後のあたりでひょいっと出てきて遺言で全部かっさらう
  みたいなことが紛争になることはしばしばです。
  法定相続分は、結局、遺留分(最低もらえる抽象的な割合)にもつながりますので、当然に非嫡出子の相続分を下げておく必要性はないでしょう。
  遺留分制度などによって、事情を適切に考慮できない(義務を果たさない者がもらいすぎ)というのであれば、むしろ遺留分割合を減らす改正を求めるべきでしょう。
 (ただし、事情を適切に考慮するのは裁判所。判断の幅が広がると、これまで以上に紛争が長期化・激化するおそれもあります)


・配偶者からすると、夫婦共有財産で被相続人名義になっていたら自分の分が一部非嫡出子にいってしまう。
 →これはそうでしょうね。ただ、相続というのはもともと運の問題なので、自分の稼いだ財産も、配偶者に行った後に、縁もゆかりもなく配偶者の兄弟の子供に行くなんてこともあるわけです。
  また、もともと違憲となった規定でも非嫡出子に行ってしまうという問題はありました。
  したがって、合憲違憲にかかわらず、配偶者を信用できないのであれば、例えば、貯金をするとき、家を買うとき、寄与割合に応じて分割所有しておく対策が必要でしょう。
  

・その他あまり論理的ではない話(差別的偏見に基づく主張、法の不知に基づく主張)
 →まあ感情論が先にたったものは法律の話ではないかなあと思いました。
  また、その議論をするなら法定相続分の規定以外のところをいじったほうがいいというものもありました。


 個人的には、被相続人の財産を分けるときに、子供はとりあえず平等に参加できるというのは自然な話であまり違和感はありません。
 嫡出子がかわいそう、配偶者がかわいそうと言っても、配偶者には2分の1の権利がそもそもあります(これさえ知らないコメントが見られたのは驚きでしたが)し、嫡出子にとっても非嫡出子にとっても親は親です。
 突然に存在を知る嫡出子側が不幸だというのは分かりますが、よそにも子供を作った被相続人の責任であって、その被相続人の財産を分けるんだから、財産の分配において責任を取りなさいということになるのかと思います。
 嫡出子側は介護の問題などをあげますが、これらの個別的事情は、法定相続分の後の具体的相続分の判断の中でいろいろやったらよいように思います。嫡出子側が介護する例は多いでしょうが、例えば、夫が妻子との確執に耐えかねてよそに家庭を作ったが、離婚ができず(立証の問題もあり、裁判で簡単に離婚が認められないケースもあるでしょう)に非嫡出子側が介護まで果たすというケースもあるからです。この場合、遺留分を考えると、遺言を書いても非嫡出子側が不利になるわけで、合理的ともいいがたいです。


 まあ、配偶者側の現実的な対応策としては、生前から、寄与分に応じて財産名義を分けておくというのがよいのでしょう。