第三節 少年裁判所の目的は何か?
成年者(adult)と同様に、少年裁判所の目的は、矯正、処罰そして地域社会の安全である。
少年裁判所は伝統的に子供たちを成年者(adult)よりも、より危険でなく、より更生に適しているとみなしている。
その結果、犯罪を行った未成年者(minors)はしばしばカウンセリングを受け、刑務所に行く代わりに(in lieu of)家庭にとどまる。
しかしながら、引用された統計は、未成年者がますます、より若年のうちに、よりたくさんかつより悪い犯罪を行っていると示唆するので、処罰と地域社会の安全の支持者(advocates)は、少年裁判所に若年犯罪者たち(young criminals)を街から排除してもらいたいと欲している。
<Juvenile Court Paternalism>
少年裁判所父権的温情主義
父権的温情主義の根源(roots)は少年審判制度の奥深くに(deep in)ある。
一つには(in part)、それはパレンスパトリエ(parens patriae(ラテン語で「国親(parent of the country)」を意味する))と呼ばれるイングランドの概念に起因する(stem)。
この概念の元では、未成年者は現実には政府に属し、両親は暫定の管理人(temporary custodians)である。
政府の腕としての家庭(少年・家事)裁判所は、それゆえ未成年者に対して最終的に(ultimately)責任を負う。
少年審判制度における計画(Programs)は、しばしば未成年者に対する父権的温情主義的な態度を反映する。
例えば、裁判官は、厳しいが思いやりある接触から少年は利益を得るとの信条の外に出ない限り(out of)「愛の鞭(tough love)」や「Scared Straight」計画(programs)に従うことを許す(may)。
(以上、仮訳。予告なく変更することがあります)
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刑罰であっても、少年の保護処分であっても、目的とするところは様々にあります。
犯罪者に一定の処分を行う目的は、犯罪者自身の更生、結果に対する応報的な処罰の意味、社会秩序の維持(その本人に対する威圧と社会全体に対する教育的効果)などでしょうか。
少年の場合には、より可塑性に富むと考えられており、単純な処罰よりも教育面が重視されていると思います。不遇な家庭環境などで十分な指導がなされてこなかったが故に問題を起こしたが、今のうちなら若年であって反社会性などが定着しておらず、また、指導を受け入れる素直さとか柔軟性があるというような少年が、典型的な少年法の対象少年なのでしょう。
少年法の目的としては、法律に記載があり、第1条「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする」ということになっており、処罰とか社会秩序の維持といった面はもとの刑事訴訟法にお任せしているのかもしれません(少年法は、少年の取扱いに関して、刑訴法を修正する法律となります)。
したがって、アメリカ的な発想とそう変わらないと思います。もちろん、それは、現在の少年法が戦後アメリカの強い影響下で作られたということにも由来しているのでしょうが。
ところで、刑務所や少年院のあり方は国ごとに様々ですが、一般の方が実際に見学した際には、日本の刑務所の様子、少年院の様子、あるいは外国(アメリカなど)のそれについて、どういう感想をもつのか、興味のあるところです。作業・制約を厳しいとみるか甘いとみるか、更生のためのやり方としてどう見るか、といった点についてですね。
国親思想。法の世界では、国家権力が保護に欠ける児童や成人(両親が養育不能又は養育を拒否した児童、身寄りのない無能力者など)の親として振る舞い、その実親や保護義務者、事実上の保護者の権限を剥奪することを指していうそうです(Wikipedia)。
父権的温情主義については、そのままパターナリズムと訳される方が自然かもしれませんが、一応日本語にしてみました。日本の歴史で、親から切り離して、国家なり地域権力が最終的に子供を取り扱ったり保護したりするケースや、それを理念化していたことがどの程度あるのかはよく分かりませんが、暇な時に少し調べてみたいと思います。
いずれにせよ、現代日本の少年法では、このような国親思想というかパターナリズムは根源的な構成原理の一つになっているのではないかと思います。少年法1条もそうですし、たとえば、少年法22条では「審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならない。」ということで、 実際の審判での扱いも、丁寧に、優しくという方向にあるのでしょうね。
ちなみに、日本では、少年による特異な事件が大きく報道でとりあげられるため、少年の起こす重大事件が増えているという印象があるようですが、実際には、重大事案が多くはなっていないようです。なお、戦後直後はもっとずっと少年による重大事件の数は多かったわけで、現在は、少年がおとなしい特異な傾向がある国なのかもしれません。
殺人(死亡させた罪)、殺人(その他)。傷害致死、強盗致死、強姦(強盗強姦、集団強姦含む)
平成19年度 17、25。25、19、97
平成16年度 17、30。48、26、181
平成12年度 57(まとめて)。115、11、312
http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/25E8598AFE90302A49256B690031DEE5.pdf
http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/59324D6EAD193FA1492570490028D18A.pdf
http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/B19DSYO44.PDF 第42 表 一般保護事件の終局総人員(事件票)
(以上、仮解説・感想。予告なく変更することがあります。)
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/03-5/kuzuno.pdf