刑訴法・保釈の「常習として」

刑訴法89条の権利保釈の除外事由には常習として長期3年以上の懲役または禁錮の罪であった場合には、当然には保釈されず、諸事情を考慮した裁量保釈のみが許されるという規定がある。

そこにいう「常習として」の意義については書かれている文献は少ない。一部の記載されている文献では、実体法にいう「常習」と同じ意味だとされている。実体法における常習性が本当の意味で分かっているのか怪しいが、日常用語としては、習慣になっているとか癖になっている、という犯罪に対する人格親和的な性状をいうと思われる。ネットで検索してみると、反復して行為を行う属性、という捉え方があった。こちらの方は、客観的に何度か同じ行為を反復していれば、今後も同じことをしそうだということで、その属性を有していると見ることになりそうである。実体法的には、常習性は刑罰を加重する根拠として用いられているから、それにふさわしい違法性なり責任非難を高める要素である必要があると思われる。

刑訴法89条の狙いは、各号列挙事由は類型的に保釈になじまない事例・被告人が含まれているもの、であって、保釈保証金により担保しがたいものが多く含まれるものを排除するのにふさわしい解釈を取る余地はありそうに思われる。

オレオレ詐欺で受け子を3回別の日に行ったような被告人は、反復する属性は有してるかもしれないが、たまたま金銭的に窮してSNSで求人に応募して関与したもので習慣癖になっているとはいえなさそうである。

しかし、オレオレ詐欺の受け子は社会的な害悪の程度が高く、当罰性が強く、被害額や被害弁償額にもよるが、前科が短くない期間の懲役刑(実刑)が見込まれる。ただ、それは責任非難よりも違法性に軸足があるように思われる。そうなると、それを「常習として」から外して権利保釈の対象とすることには違和感が禁じ得ない。

そういった犯罪については、慎重に事情を検討して保釈の可否を決する方が望ましいようにも思われたことから、刑訴法が常習性に関する実体法の解釈による拘束から免れるために、保釈実体法の解釈がどうであれ、反復する属性程度のものを常習としてと考えるのも良いのかもしれないと思った。